ハード・ロハス

スロウライフ・スピードスタイル

下北半島突端から下道で

例年お盆の時期はあまり動かないのだが、職業婦人である佳代子が1週間の休暇を取得したので、下北半島の尻屋崎をめざすことにした。
学生時代に一度と、娘ができて家族三人で一度、下北には行っている。が、いつも半島東端の尻屋崎には到達できなかった。下北半島は想像以上にでかい。


1日目 晴れ。
前夜21:00出発
出発の夜は、年に一度のペルセウス流星群が降り注ぐ日。しかし雨。
都内に入るまでは順調だったクルマの流れも、東北道に入る前に渋滞にぶつかった。渋滞を抜けたあとも混雑は延々とつづく。お盆なのでしかたない。サービスエリアも満車、満車で、休憩がとれないまま走りつづけた。
盛岡で夜が明けた。高速道路から抜け出し、下道へ入り、やっと休憩。

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3桁国道、県道、広域農道を走りつなぎ太平洋岸に沿って下北半島を北上。途中、学生時代にオートバイで来てウニ丼を食べた定食屋へ。バイパスができて少し便利になったぐらいで昔と変わらぬ光景。ウニ丼に佳代子も大喜び。値段も安く、観光地の半額程度。
そして学生のときには辿り着けなかった尻屋崎へ。積年の悲願成就。

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ところが、むつ市内に入ったところでMacBookの通信機器が壊れた。調査予定の野池は半日ごとにパソコンで編集、確認し、スマートフォン上に表示させ、ナビゲーションとして使っていた。
悪いことはかさなるもので、スマートフォンの方は、前日のアプリのバージョンアップで、調査予定地が表示できなくなっていた。
下北半島・・いちばん遠いところで手も足も出なくなった。地図をプリントアウトするか、ノートに予定地の座標でも入れておけばよかった。機器に頼り切ったシステムの脆さを思い知った。
とりあえずわずかな記憶とカーナビを頼りにいくつかの野池を調査し、午後8時に八戸のスーパー銭湯に入る。その駐車場にて車中泊。

調査池:14ポンド
走行:1,105km
費用:高速代 5,600円
   ガス代 7,126円(51.2リットル)
反省:機器に頼らなければ何もできないようではいけない。機器を使いつつも、主軸は感性で動く感覚を養うべき。


2日目 晴れ。
八戸を4:30出発。

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妻の要望で、奥入瀬十和田湖をまわった。単独での調査のときは、なるべく観光地には近づかない。調査の効率がぐっと落ちる。特に休日は。
八戸に戻り、マクドナルドでの無線LANにてデスクワーク。その後、太平洋沿いを南下。
種差海岸のスーパーでビン詰めの塩水ウニを買った。昨日のむつ市内のスーパーでは1300円。久慈だと同じチェーンのスーパーで2500円だった。
ここでまた佳代子の要望で小袖海岸に寄ることに。海岸は入口で片側交互通行。「あまちゃん」の放映にひょって今や旬の聖地で、休日はマイカー規制とのこと。
ひなびた海岸のひなびた道に、多すぎるクルマ。だるまさんが転んだ状態で対向車をやりすごしながら進む。ときどき後先考えずに突っ込んでくる対向車がいて、その都度、われわれの車列は前にも後ろにも進めず、じっと誰かが事態を突破してくれるのを待つことになる。
小袖海岸では佳代子だけが降りて僕は駐車場で待った。
いったん久慈にもどり、リアスの内陸を進む。目的地は今回の水辺調査の花である龍泉洞。世界でもっとも美しい地底湖。

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しかしここでも地底湖の前で徒歩渋滞。洞窟の中でじっと列が進むのを待つうちに、寒くなってきた。後ろで並んでいるときは何が起こっているのか、よく分からなかったが、ある程度進んだところで、地底湖の展望台にのぼる何十段かの狭い階段が見えた。階段はかろうじて上る人と下る人がすれ違える幅。展望台で行き止まりとなり、折り返しの人たちがもどってくる構造。牛歩で階段をのぼる。しかしときどき、完全に動きが止まる。なぜだろうと思っていると、展望台にのぼる最後の10段ぐらいの階段の幅がすれ違いできないほど狭くなっている。つまり片側交互通行。

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展望台上に立てる人数は十人ほど。五人が眺望を眺め、残りの五人は降りる順番を待っている。つまり、この展望台飽和状態においては、下の踊り場にいる人がちょっと気をきかせて降りてくる五人が通過するのを待つ必要がある。
このことは状況を観察していないと分からない。交通整理役がいるわけでもなく、案内があるわけでもない。
自分が階段に上がる順番が来たが、あえて立ち止まった。僕の順番は人数的に微妙な感じだったので早めに止まったのだ。後ろから圧力がかかった。難しいのは、飽和して1人でも階段に取り残される者がいたら、上の人が降りられないことである。早めに止まっておくにこしたことはない。
案の定、僕の前の人でけっこうぎりぎりだった。下りる人たちが途切れるのを待ち、上にあがった。展望台は名ばかりでたいしたことなかった。下りようとしたら、下からずんずん人の列が進んできて、完全飽和状態に。さらに下からも人が進んできて狭い踊り場も人でぎゅうぎゅうになった。
上から見ていて、じつにおもしろい構図だった。
「完全に詰んだねえ」

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そう。詰んだ。もうどうやっても、誰も進むことも退くこともできない。
さて、事態の打開のためには少々、知恵が必要だ。まず、何も考えずに突っ込んできて階段上で立ち往生している人たち、この人たちに事態を把握してもらう必要がある。そして、この人たちに何をしてもらうかを考えてもらわなければならない。そう、前から順番に後ろの人にむかって伝言ゲームのように今の状況を伝え、下がってもらうよう伝えるのだ。何も考えない人がずらっと下まで連なっているとしたら(ここからは見えない)、いちばん下の人まで伝える必要がある。なんせ詰まってしまっているのだ。
しかしこれはなかなか難しい問題だった。こうしているあいだにも、はるか遠く、見えない最後尾には降り積もる雪のように後から後から人が

スムーズに五人が上に上がれるのである。人の片側交互通行と渋滞について。「小袖と同じだね」と佳代子。
午後5時、盛岡の綱取ダムでウニ丼。

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盛岡のインターネットカフェでデスクワークと休憩。佳代子はインターネットカフェは初利用。僕は二回目。
盛岡郊外の雫石まで移動し、雫石のコンビニで車中泊。

調査池:10ポンド
走行:407km
費用:ガス代 6,900円(49リットル)
反省:クーラーボックスが大活躍。インターネットカフェは意外にいいかも。


3日目、晴れ。
雫石を午前5時出発。
尻屋崎、小袖海女センター、龍泉洞の3大ミッション加え、佳代子の現場リクエストの奥入瀬を達成したので、あとは適当に池を調査しながら帰路である。
初日に盛岡で高速道路をおりて以来、ずっと3桁国道と県道、広域農道をつないで走っている。お盆の高速道路には懲りた。

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岩手を縦走し、夕方、宮城に入った。石巻近くのお気に入りの道の駅で車中泊。温泉つきの施設で妻も気に入っていた。
温泉の休憩室でテレビが終戦記念日討論をやっていた。見ていて、ふと、住民の退去がつづく福島原発の中央突破をしようと思った。原発事故以来、一度も浜通りに行っていない。昔はあんなに行っていたのに。

調査池:24ポンド
走行:302km
反省:青森と岩手は、真夏でも車中泊が可能である。


4日目、晴れ。
石巻の道の駅を午前5時出発。
海沿いに走ると震災の爪痕はまだまだ生々しい。道路の各所で除染の文字が躍る。

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それにしても福島は暑すぎる。昼間は走っているだけで体力を激しく消耗する。夜間走行に切り替えた方がよい。コインランドリーで洗濯。1時間ばかり読書をしながら涼む。
東北道は渋滞のピーク。福島トンネルから38kmの渋滞とのこと。高速を避け、ひたすらすいている下道を走る。
午後3時、少し日が傾いてきたころあいを見はからって、裏磐梯へと標高を上げる作戦をとった。気温はいっきに20度まで下がった。磐梯の道の駅での車中泊は寒いぐらいだった。

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調査池:19ポンド
走行:334km
費用:ガス代 7,067円(52リットル)


5日目、晴れ。
深夜、磐梯を下山。深い眠りに落ちた会津若松の市街を抜け、山間部で日光方面へと南下する。
夜明け前、宇都宮近くの小さなダム湖に着いた。ここは以前、調査したことがあって、釣りをしてみたいと思った場所。2時間ほどでカタのよいへらぶなが上がったので撤収し、下道で南下。

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もうひとつ栃木の池でヨーロピアンカープフィッシングに挑む。釣果なし。

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夜は熊谷の健康センターに入ったが、あまり居心地がよくないので駐車場で車中泊に切り替える。佳代子はもう帰りたいみたいで、めずらしく弱音を吐いた。

調査池:6ポンド
走行:350km
費用:ガス代 6,999円(55.1リットル)


6日目、晴れ。
秩父方面の池を調査しながら帰路へ。入間、八王子、高尾と抜けて小田原に帰還した。
野池をまわっていると下道がとにかく楽しい。走りながらたまたま見つけた野池に立ち寄ったりしながら、のんびり帰ってくれば、お盆の渋滞とも無縁だ。
今までは遠方に行くと、帰路の高速道路がとにかく苦痛だった。おまけに高速道路料金もかかる。
下道でこれだけ延々と走ったのは学生以来だ。あのときは高速料金を惜しんで下道を走っていたが、どの旅も記憶に残っている。今回の下北ツアーもまた、目的地をめぐったことより、意味もなく下道を走ってきたことが思い出に残った。(佳代子はさすがに最後の方はうんざりしていたようだが)
今回の旅は総じていうと、下道への回帰と、ネットカフェ活用で彩られた。

調査池:5ポンド
走行:202km
費用:ガス代 3,534円(26.2リットル)


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旅のデータ
調査池総数:78ポンド(再調査池含む)
全走行距離:2,700km
軽油消費量:233.5リットル
平均燃費:11.5km