ハード・ロハス

スロウライフ・スピードスタイル

ハードロハスなカーライフを語る

「昨年、免許をとられたとか」
「35歳にして、教習所でいっぱい怒られました」
「なんで突然?」
「責任にめざめたんです。世界への」
(軽く受け流して)「クルマは?」
インプレッサが半年、それから乗りかえでインプレッサWRXのSTIが3ヶ月。僕のクルマじゃないんですけどね」
「スバルがお好きなんですね」
「ワイフがね。僕と娘はただ星のついたクルマに乗れればよかったんです」
「世界ラリーの六連星?」
「いやー目立ってましたねー。初心者のへたくそ運転で星は。なかなか真似できないと思いますよ。目立つことこそ僕の人生でしたからね。ふふふ」

「聞いてませんよ、そんなこと」
「で、フツーの生活に憧れるわけですよ。クルマを運転するとき音楽をかけてみるとか。だいたい僕は助手席に乗るときも、音楽を消しちゃうんですね。他人のクルマであってもプチッとオフにします。なのですごく評判わるいです。音楽が嫌いなんじゃないんですが、集中できないのがいやなんです。助手席にすわっているのに何が集中なのかは自分でも分からないんですが、とにかく、みんながやっているみたいにクルマで気軽に音楽を聴いてみたいし、できれば流行の音楽などに合わせてカラオケの練習なんて、想像しただけでわくわくしてきますね。ほら、よくクルマの中で口をパクパクしている人いるじゃないですか、頭とか揺らして・・市民的世界愛というか、もう見ているだけで幸せな気持ちになってきますよね。よしオレもやるぞーって、でも、うちのクルマ、CDもラジオもついてないんです」
「もう少し気のきいた願望はないんですか?」
「そうですね。クルマでお湯をわかしてコーヒーを飲むなんて、やっぱ最高にやってみたいですね。でもそれなら断然ミニバンですね。日本じゃ3台に1台がミニバンらしいし、大流行のミニバンに乗って、ちょっとばかし背筋をのばして、しゅるるっとコーヒーの湯気を鼻の穴で吸い込むんです。しゅるるっとですよ。じつに小粋(こいき)でしょう?」
「今のクルマ以外に、ほしいクルマはあるんですか?」
「もう断然、ハイブリッドカーですよ。僕はハード・ロハスですから、ラリーカーに乗っていても、信号待ちはアイドリングストップ徹底。発進は2速、次は4速、そして6速。ラリーカーなんで6速まであるんで、これは重宝してます。30キロとかで、どこまで6速で低燃費走行できるかチャレンジしていて。そりゃもう、ギクシャクガタゴト、乗り心地のわるいのなんのって」
「エンジンがおかしくなっちゃいませんか?」
「そんなのいいんです。僕はハード・ロハスなんだから」
「狙っている車種とかありますか?」
「ハイブリッドカーでコーヒーをわかして飲めるミニバンって、アリストしかないんですよ。あ、知りません? トヨタの」
「アリスト? アルファードでは?」
「そうですそうです。いつも間違えちゃうんです。で、アリストだったら車内に電源コンセントがついていて、1000ワットの給湯ポットが使えるんです。母にもらいましてね。母って離婚してるんですが、この前うちに来たとき、何かの景品でもらったらしき携帯型給湯ポットをくれたんですよ。あ、母はね、この前、インドに行きましてね。吉備舞とかやってるんです。聞いてます? で、外地に行くと、お湯に困るからと、まあそんな教訓を身にしみてきたらしく、母親らしいお節介だと思うんですが、でもこれがなかなかかわいい給湯ポットでしてね、電気式でおまけに国際対応のやつで。それで僕、ぴーんと来ましたね。こいつでもってクルマのなかでコーヒーをわかすしかねージャンって。でも1000ワットですよ! そんな電源が使えるクルマなんて、ふつうないじゃないですか。でも、あったんです。ドライヤーも電子レンジもオーケー。それがハイブリッドのアリスト」
アルファード
「ああそれそれ、それにハイブリッドなら信号待ちでアイドリングストップする必要ないのが超ラッキーでしょ。ラリーカーだと、けっこう緊張するんですよ、信号のたびに。エンジンかからなかったらどうしようって。2速発進でエンストもしますしね。ほんというと、けっこうストレスなんです。燃費も思ったようには伸びませんしね。今度はハードに4速発進、いや究極の6速発進とかにチャレンジしてみようかななんて・・」
「ハイブリッドカーを選択する前に、ラリーカーではアイドリングストップをやらないとか、そういう選択肢はないんですか?」
「ありえませんね。ハードロハスですから」