ハード・ロハス

スロウライフ・スピードスタイル

うみ、おしろ、ともだち、さんすう

 9回目の箱根チャリ登坂で、また自己新記録がでた。前回より20秒縮め、34分10秒。峠の茶屋での煙草がうまい。汗だくでじゃかすか吸っていると、観光客がめずらしい動物でも見るような目で見ていた。
 それからプールまでチャリで行き、2km泳いだ。小田原に来てから、泳いでいるときの呼吸が楽になって、いつまでも泳いでいたくなる。ただ、さすがに泳ぎながら煙草は吸えないので50分が限度。プールを出て、たてつづけに吸う。
 小田原はまこと喫煙者天国で、いたるところに灰皿がある。駅前でも路上でも吸い放題。飲食店でも禁煙席の方が片隅で小さくなっている。
 家にもどって煙草を吸っていると、「ただいま〜!」と元気な声で娘が小学校から帰ってきた。ここに越してくるまでは、治安上の理由で送り迎えを欠かすことができなかったので、「ただいま!」を聞くことは皆無だった。同様に、小学二年になるというのに、娘は完全にひとりで友だちと遊んだことがなかった。それが最近、友だちがうちに来たり、反対に遊びに行ったりするようになり、変な話、新鮮である。
 学校から帰ってきた娘は、さっそく電話で友だちと遊ぶ段取りを組みはじめた。相手の友だちはすでに別の子と遊ぶ約束がある様子だったが、
「まどか、おおぜいで遊ぶの好きじゃないから」
 などと言って何やら説得工作をしていて、横で聞いていて笑ってしまった。
 けっきょく友だちの家まで送れということになって、ひとりで行けと言ったのだが、ぶつぶつ言っているのでいっしょに外に出た。ワイフの所有物を横領してふだん使っているルイガノに乗せてみたら、ひとりですいすい乗りはじめて驚いた。27インチホイール車である。
「小田原って、いいね」と、唐突に娘が言った。
「どんなとこがいい?」
「うみ、おしろ、ともだち、さんすう!」
 以前は算数が苦手だったのに、どうしたことか。とにかく毎日学校が楽しそうである。