ハード・ロハス

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国際花見会at青山

cippillo2005-04-09

 取引先の人で、長らく南青山に居を構えている社長がいる。
 この人の招集により、青山霊園に花見に行ってきた。ワイフが仕事だったので、娘を連れて行った。
 青山霊園の桜は満開からちょうど散りはじめのころで、ちんちらぽらぽら舞い落ちる花が頭に酒に振りかかり、名残惜しさもあいまって、じつに風情であった。
 それにしても、お墓の通路にブルーシートをひろげて花見をするというは、ちょっと不思議な体験だった。右も左も前も後ろも墓石。十字架の墓、アルファベットの墓、ここの宗旨はいったい何なんだろうと思っていると、
「あー、ここんとこだけな、外人墓地の区画やねん。」
 と、件の青山住人が関西弁でおしえてくれた。
 確かに外人墓地の区画から先、つまり僕らのブルーシートの隣から先で宴(うたげ)をしているのは、みな外国人である。青山という一等地の、さらに桜の古木の真下の超一等地に場所とりもせずにへえへえとブルーシートを広げることができたのも、ここが厳然たる治外法権に守られている場所であって、俺のような田舎モンがへえへえと入っていけるような場所ではなかったからである。
 さすが南青山の古参住人の案内、穴場中の穴場。と、感心していると、この住人、早くも隣の外国人のお姉さんとコミュニケーションをとっている。ああっと思っているうちに、日本酒をもって向こうの席に陣取り、身ぶり手ぶりと関西弁のまじっためちゃめちゃな英語ですっかり周囲とも打ち解け大乱痴気騒ぎ。そのうち、娘の提案で外国人たちはみんな席を立ち上がり、鬼ごっこをはじめた。墓石を駆使しての豪快な「シークアンドハイド」。いつの間にかひとり席に残されたかっこうになった青山住人は、彼らの酒や食い物を手当たり次第、がつがつ胃袋に流し込んでいる。あげくのはてには、
「おーい、イッちゃん、これうまいで。」
 と言いつつ、食糧を横流し。まるで飼葉泥棒である。と言いつつ、確かに美味かった。
 宴も終わり、帰りしな彼は紙皿を俺に見せ、にやっと笑った。皿にはボールペンで英語のサインみたいなものがたくさんの筆跡で書かれていて、ちょっとした寄せ書きみたいだった。なんですのん、これ、と訊くと、
「あいつら、外資のお偉いさんたちばっかや。いろんな会社の管理職のオフ会やから、へへっ、これで3年は食うていけるわいな。」
「営業しとったんですか?」
 彼は酒臭い息で、だはははは、と笑った。
 じつに青山霊園外国人墓地区画は、最高の効率を誇る営業の穴場でもあったわけである。
 関西系青山住人、おそるべし。