ハード・ロハス

スロウライフ・スピードスタイル

SUP(スタンドアップパドルボード)導入1ヶ月レポート

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いつもカヤックで漕ぎまわっている漁場は、家からクルマで数分。とはいえ、クルマを使わないと何ともならないところに、すこし違和感があった。もともとクルマは面倒くさくて苦手なところにきて、燃料は高騰。
これをチャリや原付でやってのけられれば、持続可能なハードロハスなスタイルに近づくのになあと、日々、思っていた。サーファーは「波さえあれば他は何もいらない」というけど、チャリで漁に出られれば波さえもいらない。
そんな折り、テレビニュースでスタンドアップパドルボード(SUP)なるものが流行していることを知った。水の上で立ったまま漕ぐ、あれである。
調べてみると10kg前後と軽量で、収納袋はリュックタイプ。1層式のハード成形なので準備と撤収もスピードスタイルでいけそうだ。
何よりシンプルなのがいい。
元来、道具好きなものだから、カヤックの方はカイゼンを進めた二年のあいだに、魚探やら電動リールやらバッテリー、クーラーボックス、あれこれ積んで複雑化が進み、そうなるとだんだん面倒になってくるし、せっかく出漁したんだからと多めに魚を獲ってしまい、食べきれないときもある。なんかこれハードロハスとちゃうなあと違和感が募っていたが、突破口が見つからないままだった。


SUPについてはよく知らないが、持っていける竿は一本。クーラーボックスとか置けないから、その日食べる魚かイカを一尾だけ釣ったら、しゅぱっとチャリで帰る。
うーん、このシンプルさこそハードロハスだ。
とはいってもSUPはかなり高価。
集合住宅住まいなのでもちろん空気でふくらますタイプを選ぶしかないわけだが、それでもすごく高い。ドロップステッチという特殊な製法で高気圧に対応し、ゴムボートみたいにぼわんぼわんじゃなく、板のようにカチカチになる。これがどうも高価な理由らしい。ミストラル社というところの製品がいちばん好感をもったが、パドルを含めると25万。他社製で、おもちゃじゃないレベルのものだと、安くてもトータルで13万ぐらいか。
検討リストに入れてから1年近くがたっても、なんとなく決めてがないまま放置となっていた。


これが2014年夏、ひょんなことで急速に動きだす。
ニュースでレポーターがSUP体験をする映像を見ていたら、娘がやりたいと言いだした。すぐ熱が冷めるかと思いきや、けっこうしつこく言ってくる。いやはや若い娘のたっての願いとあらばしかたありませぬなあ、と、うそぶき、出資者を家庭内公募。タイミングよく、目をつけていたコストパフォーマンスの高いairSUPというメーカーの製品がカタ落ちになり、パドルやリーシュも含めたフルセット・送料込みで9万。


ぼちーっ!


到着日など前夜からそわそわする娘。夕方まで待ち、そわそわしすぎて二人とも体調がわるくなった。見かねた妻が宅配便に電話すると、大きいから後まわしにしたとのこと。これ以上待たせたら娘が死んでしまいそうだったので、営業所まで取りに行った。
その夜、SUPの上ですやすや。

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翌日、夜明け前。
一家、チャリで出撃。

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細君がコンビニに寄ってほしいと言うので、待っているあいだFacebookに写真をアップしてみると、スイムレッスンの元コーチと数年ぶりにネット再会。
トライアスロンをやっていたころ、スイムが苦手だった僕を上のクラスまで引っ張り上げてくれた恩師であるが、送別会のときに聞いたのが「南の島に行って夢を追う」という話だったが何をやるかまでは聞いていなかった。この席で隣にすわった女性がその後、宮古島に移住してカフェを始め、その店にたまたま元コーチがやって来たという投稿でつながった。
そして翌日、コーチから驚きの連絡。なんと今は夢をかなえて宮古島でSUPのコーチをやっているそうだ。


さて、とりあえず娘から。

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立った!
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落ちた。
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次は僕。
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膝立ちがやっと。
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「おとーさんが海に浮いてると、修行僧みたい」と娘。
最後の胡弓弾き。
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海の上の土下座人。
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初めて二本足で立ち上がった人類。
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ということで、僕が立ち上がれたのは1秒×2回だけ。
赤ちゃんが初めて立ち上がるとき、すごい恐怖と戦うという。二本足で立つということは未知の世界に飛び込むことにほかならない。そんな話を聞いたことはあったが、まさにそれ。
計2秒立っただけなのに、翌日、背骨のまわりと太ももの裏側が筋肉通になっていた。


その翌週、娘が定期テスト勉強なので、ひとりでチャリにて練習に行く。今度は家からいちばん近い浜。五月連休の祭りで神輿ごと海に突っ込む「浜降り」をする場所である。
膝だち漕ぎはだいぶ安定してきて、周囲をみまわす余裕が出てきた。
そして立った。1秒×2回。

スタンドアップ累計:4秒
●教訓:歳をとってバランス感覚が悪くなっているので、体幹からとてもよいトレーニングになりそうである。


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娘の定期テスト明けの日、夕方から1時間ほどいっしょにチャリで出撃。やや波が高かったので、ちょっと遠いけど家から1kmほどの海水浴場まで行った。シーズンが終わり、がらんとした海。
最初はたいした波じゃなかったのに、準備をしているあいだに、ときどきすごい大波が打ち寄せる。
あらあ〜、としばらく様子を見ていると、視界の左すみから奇妙な浮遊物が。やがてそれは目の前をゆっくり通り過ぎていく。本気の本気で仰向けの水死体かと思って身構えた。しかしゾンビみたいな動きで腕が動いている。なんと、この荒波の中、背泳ぎをしているおじいさんである。
おじいさんから勇気をもらい、少し波がおさまってきたので、念のためビーチの範囲内で娘がパドルなしでローンチとランディングおよび手をつかってのパドリングの練習。浜に上がったあと、娘が神妙な顔で言った。
「波をなめてた。50cmの津波でも、だめだよ、きっと」

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再び風と波が強くなってきて僕の出撃。
この海はカヤックでは100回以上出ているが、それでも海のことはよく分からない。勝手が違うというより、海自体が分からない。海水浴場だけど、分からない。
様子見で、海水浴場のブイの範囲内で膝立ち。
ときどき、すごいうねりが来て、沖目から白波が立つ。こ、これってサーファーが言うところの「ブレイク」ってやつですか!?
また、膝立ちすると風を受けてけっこうな勢いで流される。必死で漕ぐ。まったく位置が変わらない。さらに漕ぐ。やっぱり位置が変わらない。
10分ぐらいもがいていただろうか。あきらめて、そのまま上陸することにした。風があると、ここまで進まないものとは思わなかった。
ランディング時、大波にのってしまい、なぜか両手を離してみごと着地。生まれてはじめて波に乗った。すわったままだけど・・。
ということで本日はスタンドアップ0回。
それにしても、いったいいつになったら、人類は二足歩行で立ち上がれるのだろうか。

スタンドアップ累計:4秒
●教訓:風が強くなったら、最後は腹ばいで腕パドリングの方がよさそう。となるとウェットスーツは必需品か。

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コストパフォーマンスの高いインフレータブルSUP(airSUP) - カイゼン生活