ハード・ロハス

スロウライフ・スピードスタイル

中学女子駅伝

 まじめだけが取り柄で毎日休まず中学陸上部の練習に取り組んできた娘であるが、結果の方はぱっとしない。そこそこ持久力はあるのかなと思っていたが、小学校のときに代表で出た市内の学校対抗・持久走大会ではほとんどビリだったし、やはりその世界に入ればホンモノが集ってくるわけだし、夏休みなど自主特訓などやってはみたが、凡人の限界を感じたものである。
 ところが、まじめさを買ってもらったのか、中学駅伝の5名のチーム名簿に名前が入った。
 しかしながら他の4名は、1年のときからすでに正選手として起用されていた3名(小田原市の1500mの大会記録を更新した2名を含む)、および、いきなり関東大会までいったスーパールーキーの1年生。
 もうほとんどN700系新幹線の真ん中に1両だけ連結された在来線という感じである。
 うーん、だいじょうぶか・・。


 地区予選は酒匂川サイクリング公園で行われた。
 さすが地元のスターが引っ張る超特急。
 1区のななちゃん選手は区間新記録更新で早くも独走体制を築き、2区のゆりちゃん選手はライバル校のスーパールーキーに追い上げられたものの、さすがというか、渾身の気迫で2秒差で首位を守り抜き3区の娘へ。
 もうここで親の方は卒倒寸前である。抜かれて、大差をつけられ、みんなから石を投げられ、逃げるように会場を去る構図がまぶたに浮かんだ。
 ところが、である。
 後半の見通しのいい直線に最初に現れたのは、わが家の市民ランナーではないか。


 大きなストライドの力強い走り。思わず、
「う〜む、がんばっとるねぇ〜」
 と声をもらしたら、風のように通り過ぎる娘の顔がぱっと明るくなった。


 それにしても、なんでこんなに笑っているのか。他のチームメートの顔はどれも気迫と苦しさとで荘厳ささえあるのに。こんなのがチームに知られたら、凡人の分際でなめとんのか、と怒られそうである。
「だって、みんな怒鳴るぐらいすごい応援なのに、ひとりだけ気の抜けた声で、がんばれえ、だもん。もう、おかしくって・・」


 ともあれ、なんとか無事に4区のさきちゃん先輩にたすきを渡した。
「まどちゃんが先頭で帰ってきたから、がぜんやる気がでた」
 と後に語るさきちゃん先輩はみごと区間新記録をたたきだす。
 つづく5区のりんちゃん選手は1年生ながらスターの貫禄をみせる走りでトップでゴール。写真はゴールに駆け寄るチーム選手たち。駆け寄るのも、さすが陸上部、速い速い。

 終わってみれば、2位と2分差の圧勝。さらにコースレコード(大会新記録)までついてきた。のに、なぜか集まって号泣する少女たち。


 次は来月に八景島で開催される県大会となる。
 もちろん、娘にとっては初めて。まさに勝ち馬に乗せてもらうとはこのことであろう。しかし、ここからがほんとうにこわい。こわくて、もう応援には行けなさそうだ。