ハード・ロハス

スロウライフ・スピードスタイル

はじめてクルマで上京、はじめてイスラーム女と話す

撮影取材の仕事があってクルマで上京した。
 運転に自信がないので午前4時に出発したにもかかわらず、首都高は渋滞していたので、世田谷から環八を通って下道を進んだ。こちらもずっと混雑していた。東京はすごいと思った。
 一件目の取材は北区で午前10時半から。午前6時に到着。ゆっくり駐車場を探すつもりが、どこもいっぱい。やっと一台分だけ見つけた。建物と塀に囲まれた異形五角形の、五台ほどの小さなコインパーキング。その一番奥のスペース。
 クルマを降りて、どうやって入れるのか考えた。バックでこうきて? それとも頭をいったんここに突っ込んで? 警察の実地検分みたいに5分ほど検証。で、これは俺には無理だと判断した。
 やむなく取材先の店舗前に何とか停めさせてもらった。
 午後は2件目の取材で、池袋駅前に。クルマはこのままにさせてもらって電車で行こうと思っていたら、5年来の友人で取引先の取締役でもあるHさんがついてきてくれるという。
「いっちゃんひとりだと危ないからな」
 助手席にすわってもらって都心を運転。右に行ったり左に行ったり上に行ったり下に行ったり。都心の道路は3次元で、早めに行く先を確認しないと、路駐やらバスやらさまざまな障害物に阻まれて思う方向に進めなくなる。あっちこっちでクラクションの応酬。うーん、ほんとに目がまわってきた。
 ナビをしてくれたH取締役のおかげで、どうにか到着。しかし駐車場をどう探すか悩んでいると、
「おれが近くをぐるぐる走ってるよ。マニュアルはひさしぶりだしな」
 と言って、ラリー仕様インプレッサにスーツ姿でカッコよく走り去って行った。
 1時間後、2件目の取材を終えて、無事、H取締役に拾ってもらった。
「ちょっと飲める?」
「だいじょぶですけど」
「んじゃ、クルマ置きに行こか」
 彼はそのまま運転をつづけ、あれよあれよという間に小田原に着いた。
「クルマ置きに行くって、都内じゃなかったの?」
「そしたら帰りにまた運転しなきゃならないだろ。なんか心配だからな」
 こうして明るいうちから小田原で飲んだ。H取締役は昔、ここに取引先があって債権回収に通ったこともあるといって、裏通りもくわしかった。
 1件目は居酒屋、2件目で飲んだ店では、イスラームの女の子が横についた。H取締役を見ると、モンゴル人とタイ人にはさまれている。1時間ほどいて、コーラについて話をした。コーランと言ったら通じず、インドネシアではコーラと発音するらしかった。
「顔は隠さなくていいの?」
「ちがうよ。顔だけ出すの。でも、あれはアラビャのヒトだけ」
 スカートは短かいし、イスラームもいろいろあるんだと思った。
 H取締役はこのあと、さっそうと新幹線に乗って東京にもどって行った。きっとこれから仕事をするのだろう。すごいエネルギーだ。Hさんは50台である。